大阪高等裁判所 昭和44年(ネ)1112号 中間判決 1970年5月06日
控訴人 李燕郷
<ほか一名>
右両名訴訟代理人弁護士 大白慎三
大白勝
大藤潔夫
被控訴人 中島もと
右訴訟代理人弁護士 清水賀一
主文
本件各控訴は適法である。
事実
控訴人らは、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、本案前の主張として「本件控訴を却下する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との判決を求め、本案につき、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との判決を求めた。
≪以下事実省略≫
理由
≪証拠省略≫によれば、本件の原判決は、昭和四四年六月一八日午前一〇時に裁判所書記官林照明立会の上言渡がなされ、被控訴代理人にはその日の午前一〇時に、控訴人ら代理人には翌一九日午前一〇時に交付送達がなされたとなっていること、本件判決正本の送達は、控訴人らと被控訴人には交付送達を以て、その他の当事者には郵便を以て送達がなされ、呉峰子には昭和四四年六月二二日に、株式会社福徳相互銀行の訴訟代理人松尾晋一には同年同月二三日に送達がなされていて、両者とも同じ神戸市内であることに鑑みると、その発送は必ずしも六月一九日ではないと推測されること、被控訴代理人に対する交付送達は、昭和四四年六月一八日午前一〇時になされたことになっているが、(判決の言渡に立会った書記官が即時に判決正本を当事者に交付することは特段の事由の認められない本件では不可能であろう。従って時間の記載の正確性は疑わしい。)その送達報告書の作成年月日の日付である六月一九日は六月一八日と訂正されていること、送達報告書は被控訴人訴訟代理人に対するものの次に、同月二四日の受付印のある呉峰子と前記松尾晋一に対するものが記録に綴られ、最後に控訴人ら訴訟代理人に対するものが綴られていること、控訴人ら代理人の使者である菅本啓子は、本件判決正本を受取ると表面に44・6・20・という受領の日を示す日付印を押したが、同人は当日原裁判所において、原判決正本のほか同裁判所第一二民事係からも同庁昭和四三年(ワ)第一、一三二号事件の判決正本を受取ったこと、その判決正本にも本件判決正本と同じように斜めに44・6・20・のゴム判による日付印が押印されていること、控訴代理人方では判決正本のみならず受領した書類には必ず日付印を押すことになっており、本判決正本の受領の日付印もその一環として押されたものであること、証人菅本啓子は、同人が本件判決正本を受取った時間は午後一時か二時頃であるといい、乙二号証の送達報告書の送達時間が午後三時となっていることに鑑みると、本件判決正本の送達時間は午後ではないかと思われるのに、送達報告書は午前一〇時となっていて正確でないことの各事実が認められる。
以上の事実によれば、本件送達報告書には、昭和四四年六月一九日午前一〇時に原判決正本が控訴人ら訴訟代理人に送達されたと記載されてあり、その衝に当った原裁判所の書記官である林照明は、証人として判決正本は送達報告書どおり送達されたと述べ、当裁判所の照会に対する右林照明の報告書にも同様のことが記載されているが、前記認定の各事実に照らすと、この送達報告書の記載の正確性には疑問があり、これらによっては、原判決正本が控訴人らに送達報告書に記載の日に送達されたものと認めることはできない。かえって、証人菅啓子の同年六月二〇日に受取ったという証言の方が信用すべきものと考えられるので、控訴人らに対する原判決正本は、同月二〇日に送達されたものと認めるのを相当とする。そして、控訴人らが本件控訴を右六月二〇日より一四日以内である同年七月四日に申立てたことは、記録上明らかであるから、本件控訴は適法であるといわざるを得ない。よって、中間判決によって控訴人らの本件控訴の適法なことを宣言して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡野幸之助 裁判官 宮本勝美 菊地博)